皆さまはコンサートホールでピアノ演奏会を楽しまれる機会があるかと思います。
前回のブログではコンサートピアノの代名詞とも言うべき「スタインウェイモデルD-274」について書きました。
今回は、そのコンサートピアノの運営管理にとって大切なことを述べたいと思います。
特に、コンサートホールでピアノの管理運営を担当される方には有益な情報となりますので、ぜひお読みいただけましたら幸いです。

結論から申しますと、一般のピアノと異なるコンサートピアノは「コンサートピアノを支える5つの要素」に基づき正しく運用管理をおこなうことで、ピアノ本来の性能を発揮することができると考えます。
では具体的に「コンサートピアノを支える5つの要素」について順を追って、簡単にご説明します。

①　新規ピアノ導入・買い替え

②　定期的な保守点検と修理

③　日頃のピアノ管理

④　日常のピアノ調律

⑤　コンサートピアノが本来持つ性能

①　新規ピアノ導入・買い替え
コンサートピアノは一般のピアノとは使用用途や条件が全く異なるため、「長く使用できる」「修理を繰り返せば元通りになる」という考えは幻想だと断言できます。
例えば、ピアノが製造されたメーカーの工場であれば、修理に必要な部品や設備、そしてピアノを知り尽くした工場の職人により完全な修復も可能です。
しかし、国内での修理ではそれらに限界があり、大きなコンサートホールで大規模オーケストラとの競演でピアノを使用する際に求められる圧倒的なパワーや、柔軟性に富んだ表現力のある楽器を提供するためにはコンサートピアノの買い替えは必須だと考えます。

②　定期的な保守点検と修理
定期的な保守点検とは人間でいう「健康診断」にあたります。日頃の限られた時間では難しいピアノの調整をじっくりと時間をかけることで本来の基準値に戻し、長く安心してピアノを使用することを目指します。
しかし、ピアノの状態や経年劣化の問題から、そうした保守点検では難しい場合にはピアノを修理する必要があるため、それを見極めるピアノ技術者の存在が必要不可欠です。

③　日頃のピアノ管理
日頃の管理はコンサートピアノを安定的に維持管理する上で、ピアノを所有されるホールの皆さまにお願いしている大切な作業となります。
どんなに素晴らしい性能を誇るピアノであっても、日頃の管理を怠ればアーティストや利用者の皆さまから選ばれないピアノとなってしまいます。
そのため、日頃からピアノ庫の環境を整えていただくことがとても重要となります。

④　日常のピアノ調律
日常の調律はコンサートピアノを維持する上で大切な要素の1つです。コンサートピアノはプロの演奏家からアマチュアの方まで多くの方が使用しますが、その際にはピアノ調律師による調律作業が必要となります。
この調律には2つの面があり、１つは演奏者のためにピアノを仕上げること。
そしてもう一つは、次にピアノを使用される方へ安定的にピアノを引き渡すこと。いわゆる「リレー競技」を想像していただけるとわかりやすいと思います。
リレーは走者がチームを組み次の走者にバトンを渡す競技ですが、バトンの受け渡しには特に慎重になるとの同じで、ピアノ調律も「この演奏会だけ成功すれば良い」という考えでは安定的なピアノの維持に支障が出る恐れがあります。
ゆえに、コンサートピアノを熟知した技術者がチームを組んで、一貫した調律サイクルを回す必要があります。

⑤　コンサートピアノが本来持つ性能
上記で挙げた①～④のサイクルをしっかりと回すことで、すべてのコンサートピアノに備わっている本来のポテンシャルを存分に発揮することができると考えます。
なお、各ピアノメーカーにとってコンサートピアノは自社を代表するモデルとなるため、特別なコンサートやコンクールではピアノを左右するコンサート・チューナーの存在もクローズアップされます。
その話題については別の機会に触れたいと思います。

まとめ
自宅のピアノが自分だけの楽器であるのに対して、コンサートホールのピアノは公共財としての性質があり、運営管理には上記に挙げた適切な運用サイクルが重要となります。
さらに、中長期的な視野でコンサートピアノを運用するための計画やサポートをおこなう管理業者の選定も重要となります。
これからもコンサートピアノに関心を持たれている皆さまに可能な限り客観的な情報をお届けしたいと思いますので、フォローして頂けましたら幸いです。

ここまでご一読いただき、誠にありがとうございました。

ピアノカウンセラー　カルペディエム
山下 達也

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